着物はなぜ高く売れないの?
買取価格が安い理由をまとめてみた
着物の買取特集
売る前に知っておきたい!
中古着物が高く売れない理由
大切な着物を業者に売るときに、買取価格が安すぎてショックを受ける……なんて体験はしたくないですよね。
残念ながら、着物は持ち主が感じている価値と中古市場での価値に差が生じやすい商品です。
「着物を買ったときの1割~2割くらいの値段で売れるんじゃないか」
と期待して売ると、査定後に打ちのめされることになるかもしれません。
私が以前見たNHKの番組では、60代くらいの女性が自宅で着物や帯を査定してもらった後に 「もう一桁高く売れると思った……」とがっかりしていました。
その女性の買取額は『着物7点(大島紬1点を含む)、帯7点、小物1点』でちょうど1万円でした。
大島紬は買うときには100万円近くしたものらしく、女性は買取額の安さに驚いていました。
別の方の例では『着物15点、帯10点』で買取額は2万2,000円でした。
この方も買取額を聞いてがっかりしていましたが、
「それでも、次に着てくれる人いるならいいかな」と着物を売ることについて前向きに捉えていらっしゃるようでした。
番組では業者が着物を買い取った後に、どのようにして中古市場で販売するのかを解説していました。
着物の買取価格が安くなってしまう理由は複数あって、業者が不当に安く買い叩いているわけではないようです。
その辺りの事情を事前に知っておけば、あまりストレスを感じずに着物を処分できると思います。
特に着物に思い入れのない私は「ああ、買取後にこれだけ業者側にコストがかかるなら、着物の買取価格が安いのも納得だわ」と思いました。
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着物が高く売れない理由を知っておくといいよ!
1. 着物のクーリングオフ対策にコストがかかる
出張買取で売った着物は、買取成立から8日間はクーリングオフ制度が利用できます。
理由を問わず、着物を売った側が
「やっぱり着物を売るのはやめた。返してほしい」
と言えば、業者側は対応しなきゃいけないんですね。
そのため、買取した着物は一度倉庫に全て集めて、クーリングオフ制度を
適用できる期間中はいつでも返品できる状態で保管しておく必要があります。
倉庫の場所代もかかりますし、どこの誰から買取した着物なのか、わかるように荷物を仕分けするのに人件費もかかります。
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業者は着物を買い取ってから、
すぐに販売できるわけじゃないんだね!
クーリングオフが使えるのは出張買取だけ!
クーリングオフ制度は店頭で着物を売った場合、または宅配買取で着物を売った場合には適用されません。
出張買取でのみ使える制度です。
2. 全ての着物がそのまま再販できるわけではない
買取した着物はクーリングオフ期間を過ぎてから、
- そのまま売れるもの
- 素材として売れるもの
- 売れないもの(処分するもの)
その仕分けをするのに人件費がかかります。
着物は洋服とは違って、素人でも価値がわかるブランドタグなどは付いていません。
そのため、着物を鑑定できる人が一点ずつ確認する必要があります。
誰にでもできる仕事ではありません。
※一部の作家着物やブランド着物はついては、反物に染められた「落款・作家名」や着物に付いている証紙で価値がわかることもあります。
着物を売る側としては、売った着物を新しい持ち主が着る姿を想像してしまいますが、実際にはそのまま着物として再販できるものは一部なんです。
- シミ、汚れがあるもの
- 色・柄が時代遅れなもの
- 素材が上質ではないもの
- サイズが小さいもの(後述)
などの買い手がつきにくい着物は素材として国内外の業者に販売されます。
素材として販売された着物は、和風の小物や海外の民族衣装などに生まれ変わるそうです。
中古の布地として扱われるので、当然、着物としての値段では売れませんよね。
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リユースではなくリサイクルに回されるってことだね。
和風の小物もそんなに高い値段では売ってないから、素材としての着物はそんなに高く売れないんだろうなぁ。
また、古過ぎて素材として販売できない着物は、ゴミとして処分されます。
これは本などの買取でも同じことが行なわれていて、短時間でまとめて査定して買い取った後に「やっぱりこれは売れないわ」という商品を弾いて、
店頭には並べずに処分します。
買取した着物は全て再利用されるわけじゃないんですね。
でも、売る側はそれを知らずに「買い取った着物は全て再販するんだろう」と思って、買取価格に期待してしまうんですよね。
買い取った着物を処分するコストも買取価格に影響しています。
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売れそうにない着物は買取後に処分しちゃうんだね
3. サイズが小さい着物は需要が少ない
どんなに高価で保存状態が良い着物でも、サイズが小さいとそれだけで高く売れにくくなります。
私がリサイクル着物のオンラインショップで中古着物のサイズと販売価格をチェックしてみたところ、身丈155cm未満の着物は高価格帯にはほとんどありませんでした。
身丈160cm以上の着物の方が高く売られています。
サイズが大きい分には、生地を切って調整できますからね。
古い着物はサイズが小さいものが多い
文部科学省の「学校保健統計調査」によると、日本人の身長はどんどん伸びているわけではなく、1995年頃からは横ばいの状況が続いているようです。
それでも、今の高齢者が若者だった頃と比較すると、平均身長が大きく伸びているのは間違いありません。
日本人 17歳女子の平均身長 | ||
---|---|---|
1950年 | 1980年 | 2015年 |
152.7cm | 157.0cm | 157.9cm |
例えば17歳女子の平均身長を年度別に比較した場合、
1950年→1980年の30年間で平均身長が+4.3cm伸びており、
1950年→2015年の65年間では+5.2cm伸びています。
背の高さが5cmも違えば、着物のサイズも一回り違いますよね。
昔の着物はサイズが小さいものが多く、それだけで高く売れにくいことを知っておくと、がっかりせずに済むかもしれません。
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業者もそう高く買い取れないんだろうね
4. そもそも中古着物の販売価格が安い
中古着物の販売価格はかなり安いです。
帯も着物も正絹のものが、一万円以下でたくさん売られています。
もちろん、10万円以上する高額な中古着物もありますが、それは一部の高級着物だけでメインの価格帯ではありません。
着物を売る前に一度、リサイクル着物専門店で着物の販売価格をチェックして、相場を探ってみるのもおすすめですよ。
「着物,中古販売」などのキーワードで検索すると、バイセルなどの大手買取店のオンラインストアが検索結果に表示されます。
どんな着物がいくらぐらいで売られているのかを見れば、買い手市場の業界だとわかりますよ。
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中古着物の販売価格を高くしたらレンタル着物に
お客が流れてしまうのかもしれないね
5. 中古着物は古着の一種
最後に、私の祖母などは顔を真っ赤にして怒りそうなことを書きます。
着物は買うときの値段があまりに高いため、金やブランド時計などと同じ
イメージを持っている方もいらっしゃるかと思いますが、性質が全然違います。
着物は購入後に経済的な価値が大きく下がる商品です。
金の延べ棒やロレックスのように、買ったときの価格よりも高く売れることはまずありません。
一度人が着たものは古着として扱われるため、持ち主が思っている以上に
価値が落ちます。
これは着物が消耗品である以上、仕方がないことです。
自分が中古着物を買う立場で考えた場合、中古品の販売価格が新品よりも
かなり安くないと買う気がしませんよね。
着物に使われている正絹は経年劣化して裂けやすくなっていきますし、
一度付いた汚れは完全には落ちません。
他の有形資産のように「着物もいざとなったら高く売れるはずだ」と信じていると、売るときにがっかりしてしまうと思います。
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みんなお金があったら、着るものは新品が欲しいよね。
例えばDVDなんかは中古品でも気にならないけど、
身に着けるものはね~
手持ちの着物を高く売るコツ
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1. 着物の証紙を付けて売る
証紙は着物の価値や品質を証明する、大事な付属品です。
着物を売るときには落款・証紙のどちらかがあると査定でプラスになるので、誤って捨てないように注意しましょう。
2. 新品の着物はしつけ糸を外さずに売る
買ってから一度も着る機会がなく、仕付け糸が付いたまま保管されている着物は、そのまま仕付け糸がついた状態で査定してもらいましょう。
しつけ糸が付いたままの方が「未着用の新品」であることがわかるので、
査定でプラスになります。
3. 着物はなるべくまとめ売りする
着物はなるべくまとめ売りした方が買取価格がつきやすいです。
あまり価値が高くない着物でも、「全部まとめていくら」という形でキリのよい値段をつけてもらえる可能性があります。
出張買取で着物を売る場合、業者側には出張費用がかるので、複数回に分けて少しずつ売るよりも一度にまとめて売る方が喜ばれます。
4. 買取キャンペーンを利用する
期間限定で行なわれている買取キャンペーンを利用すれば、同じ着物でも
より高く売れる可能性があります。
売りたい業者で買取キャンペーンをやっているかどうかチェックしてみましょう。
例えば、ちびまる子ちゃんのCMで有名なバイセルでは、2023年12月31日まで抽選で現金がもらえる買取キャンペーンを行っています。
これから着物を売りたい人はチェックしてみてくださいね。
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ちなみにバイセルの出張買取では、
女性の査定スタッフに来てもらえるように電話で依頼できるよ!
5. 飛び込み営業の買取業者には売らない
最後に、自宅にアポなしで訪ねてきて、着物や貴金属を売るように勧めてくる業者には絶対に売ってはいけません。
100%買い叩かれます。
以前、一人暮らしの高齢者を狙った悪質な買取業者が増えて、押し売りならぬ『押し買い』だと社会問題になりましたよね。
国民生活センターの発表によると、押し買いの被害件数は2016年がピークで、それ以降は減ってきているようです。
現在は、古物商の飛び込み営業は法律で禁止されています。
こちらが買取を依頼していないのに自宅に営業をかけてくる時点で間違いなく悪徳業者なので、ご注意ください。
また、古物商の飛び込み営業が法律で禁止されたことで、電話営業でワンクッション置いてから押し買いを行なうパターンもあるそうです。
電話で約束を取り付けてから個人宅に訪問すれば、押し買いをしても訪問したこと自体は違法にならないのです。
こうした悪徳業者の目的は着物ではなく、個人宅にある金やプラチナを安く買い叩くことです。
「着物を売りませんか?」と勧誘しておいて、実際には金やプラチナを相場よりも安く強引に買い取り、転売して儲けるスキームらしいです。
着物がたくさんある家には金やプラチナも当然あるだろう、という目論見
なんでしょうね。
こうした被害に遭わないために、着物を出張買取で売るときは知名度の高い大手の買取業者か、地元に店舗があって長く営業を続けている業者がおすすめです。
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私の祖母も着物の押し買いではないけれど、
電気治療器のアポなし訪問営業がしつこくて、
トラブルになりかけたことがあるよ
ほかの家族が不在の時間を狙って来るから悪質なんだよね……
買取価格が安くても、着物を売れるだけで立派
私自身は着物を売ったことはなく、祖母の遺品整理でカビた着物と帯を大量に処分した、苦い経験があります。
自分で買ったものでなくても、高額な着物をゴミ袋に入れて捨てる作業は
つらかったです。
着物を作った人たちに対して申し訳ない気持ちになりました。
祖母は着物への思い入れが強くて手放したがらず、断捨離の「ダ」の字も通じない人でした。
介護が必要になってからは本人も家族も着物の手入れをする余裕がなくて、着物タンスの中に入れっぱなしにしたまま何年も放置しちゃったんです。
その結果、何十万円もしたらしい着物や帯は傷んで、どこにも売れない状態になってしまいました。
※くわしい失敗談は別記事「祖母の着物の断捨離で失敗した話」にまとめています
そんなもったいない経験をしているので、着物の買取価格がどれだけ安くても、売れる程度の状態で着物を保管できているのがまずご立派だと思いますし、着物の処分を人に任せずに自分で行なえる方は尊敬します。
私のように遺品で大量の着物が出てきて、その処分に困る人がとても多いと思うんです。
売るにしても捨てるにしても、着物のように高額な物を処分するのは消耗するんですよね。
古い着物の価値はこれから下がることはあっても上がることはないでしょうから、少しでも状態が良いうちに売るのがおすすめです。
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売れるうちに処分できるかどうかの方が大事だと思うよ~